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バスト
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豊胸術の変遷





豊胸術はその手法をめぐって、さまざまな変遷をたどってきました。
初期の豊胸術はお腹やお尻の脂肪を切り取り、それをバストに埋め込むというもので、これは乳房再建という意味合いが強かったようです。
1950年代になると、何らかの注入剤(フィラー)をバストに注射するという方法が生まれました。ですがこのときフィラーとして使われたのがパラフィンやシリコンであったため、すぐに健康被害が問題となり、この方法も消えていきました。
豊胸術の変遷 次に考えられたのがフィラーを袋状のバッグに密封した「バッグプロテーゼ」をバストに埋め込むという方法です。「直接注入ではないので安全で、バッグの大きさを変えることで自在にバストアップできる」と考えられたのです。これがプロテーゼ法の始まりで、1960年代の欧米を中心に広く人気を集めることになりました。
ところがこのプロテーゼ法にも問題がありました。プロテーゼそのものの劣化による損傷、交通事故による衝撃などでプロテーゼが破損し、フィラーが漏れ出して健康被害を起こすというトラブルが多発し、社会問題にまで発展してしまったのです。
一方、一時すたれていた注入法は、パラフィンやシリコンではなく患者様自身から採取した脂肪をフィラーとして使用することで、安全性の高い脂肪注入法として再登場しました。
このように異なる変遷をたどった二つの手法が現在も行われていますが、それぞれに特徴が違うため、どちらの方法を採用するかはクリニックの判断次第です。日本ではプロテーゼ法が広く普及していて、脂肪注入法を扱うクリニックは少数派です。ですが新たな技術「コンデンスリッチ豊胸」の登場で、脂肪注入法のメリットを見直す動きも出ています。

デメリットも無視できないプロテーゼ法

プロテーゼ法はプロテーゼの大きさや形を選ぶことで、かなり極端なバストアップも可能です。バストに悩む女性の多くは「少しでも大きくしたい」というご希望をお持ちですし、そうした声に応えるため、プロテーゼ法を扱うクリニックが多いというのも無理からぬことでしょう。ですがプロテーゼ法には、無視できないデメリットがあるのです。

カプセル拘縮が起こるとバストが硬くなってしまう
人体は自分自身の組織と異物を見分け、異物を排除しようとします。そのためバストにプロテーゼを埋め込むと、その周囲に膜を作ってぴっちりと覆い、まわりの組織から隔離しようとします。これが「カプセル拘縮」と呼ばれる現象です。
カプセル拘縮を起こすとプロテーゼは流動性を失い、バストが硬く変形してしまいます。それを防ぐには術後のマッサージが必要になるのですが、それを行ってもカプセル拘縮を完全に防ぐことはできません。
中身が漏れ出す危険がある
プロテーゼの安全性は高められていますが、体にとってはやはり異物に違いありません。長期にわたって埋め込んだ状態では、経年劣化による損傷も考えられます。また交通事故の衝撃や航空機内の気圧差でバッグが破裂し、内容物が漏れ出したという事故は、実際に起こっています。こうした危険があるということ自体、心理的にも大きな負荷だといえます。
やがて再手術が必要になる
プロテーゼは一生使えるというわけではなく、個人差はあるものの「寿命」というものがあります。その期間はおおよそ十数年というところですが、寿命が近づいたらプロテーゼを抜くか、入れ替えるかしなくてはなりません。つまり、やがて再手術が必要になるのです。

プロテーゼ法は確かに極端なバストアップが可能です。ですがその劇的な豊胸効果と引き替えに背負わねばならないデメリットは無視できないほど多く、しかも重大なものだと私は考えます。
最近になって広まりつつある「ヒアルロン酸による豊胸」も同じです。注射するだけという簡便さは確かに女性にとっては魅力でしょうが、その効果の持続性や費用、それ以前に安全性について、とても大きな疑問を感じます。
そのため当院では開院以来、人工物を使用したこれらの豊胸術は、一切行っていません。

感触まで自然なバストを生む脂肪注入法

もうひとつの豊胸術である脂肪注入法は、患者様のお腹や太ももから採取した脂肪を、バストに注入していく方法です。この方法にはプロテーゼ法にはない、多くのメリットがあります。
まず異物を使わない安全性の高さです。自分の組織である脂肪を使うのですから、アレルギーや異物反応の心配がありません。これは言葉を換えれば「安心感」にもつながるでしょう。もちろん術後のマッサージや再手術の必要もありません。
注入する脂肪の量や注入する場所を変えていくことで、大きさだけでなくバストの形を細かく整えることができます。「バストの上側に広くボリュームがほしい」「バストの下をふっくらさせたい」「内側をふくらませて、谷間をくっきりさせたい」など、細かなリクエストにもお応えできます。中年以降の方ならば全体的にさりげない注入を施し、バストのハリを取り戻すということもできます。単なるサイズアップではなく、自然で美しいバストに整えることができるのです。形だけでなく感触までナチュラルですから、違和感を覚えることはまずないでしょう。
注入する脂肪はウエストや太ももなど、患者様の「気になる部分」から吸引しますから、バストアップと同時に部分痩せもできます。つまり、全身のトータルバランスを美しく整えることができるのです。

脂肪注入法のデメリットとは?

多くのメリットを持つ脂肪注入法ですが、実はデメリットがないわけではありません。
まず、あまりに極端なサイズアップができません。これは一度の手術で注入できる脂肪の量に限界があるためですが、ある程度の期間をあけて再度の治療を行えば、この問題は解決できます。
また、注入した脂肪の「生着率」も、よく問題視されます。生着率とは、バストに注入した脂肪がどれくらいその場所にとどまっていられるかを表す数値です。過去の脂肪注入法ではこの生着率があまり高くなく、そのため注入した脂肪のうちのいくらかは、体に吸収されてしまいました。脂肪が吸収されてしまえば、当然バストも小さくなってしまいます。中には「術後数年で元に戻ってしまった」ということもあったようです。
この問題を解決するため、当院では多くの工夫と独自の改善を重ねて、水準以上の高い生着率を維持してきました。さらに近年になって登場した「コンデンスリッチ豊胸」によって、約80%という高レベルにまで高めています。
こうしてみると、脂肪注入法のデメリットというのはすでに解決されているといっても良いでしょう。もしも未解決の問題を挙げるなら「優れた技術を持つ医師が少ない」ということでしょうか。
脂肪注入法は「吸引と注入」という、異なる二つのテクニックが必要ですし、職人のようなカンも、美的センスも求められます。いずれも一朝一夕で身につけられるものではありません。これまでプロテーゼ法が主流であった日本では、脂肪注入に熟達した医師がなかなか育ってきていない、というのが実情です。ですから、これから脂肪注入法を受けたいとお考えの方はそうした点にも注意しながらクリニックを選ぶよう、お勧めします。



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