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バスト
Breast
さまざまな豊胸術とプロテーゼの種類
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美容整形のメニューの中で、豊胸術には過去に多くのトラブルがつきまとっていました。その中でもっとも大きな問題だったのがバストに埋め込む素材です。
昔はシリコンやパラフィン・ゲルといった素材をバストに注射するという方法がとられていました。切開することなく注射するだけでしたから豊胸術は一気に普及していったのですが、やがて注入した素材による健康被害が表面化し、社会問題にまでなってしまいました。
次に登場したのがシリコンプロテーゼです。これは袋状のシリコンバッグにシリコンゲルを詰め、それをバストに埋め込むというものです。バッグの大きさを選ぶことで極端なバストアップもできるようになり、広く世界中で使われていました。
ところが人体の異物反応によって、バストが硬く変形してしまう「カプセル拘縮」という現象を起こすことや、バッグが破損して内容物が漏れ出す危険があること、それによる炎症やガン、免疫不全症の可能性などが指摘されるようになりました。このため1992年、日本では豊胸目的のシリコンプロテーゼの製造が禁止されることとなったのです。
「シリコンは危険だ」という声を受けて作られたのが生理食塩水プロテーゼです。生理食塩水は人間の体液に近く、万一バッグが破損して中身が漏れ出しても安全だとされました。ですがこの方法にも問題がありました。
生理食塩水プロテーゼの問題点
1 内容物が漏れ出す可能性が高い
生理食塩水は確かに人体には無害ですが、中身が漏れ出てしまったら、当然バストはしぼんでしまいますから、またプロテーゼを入れ替えなければなりません。また、アクシデントによりシリコンの膜が破れることもあります。
2 カプセル拘縮のリスクは変わらない
たとえ内容物が変わっても、プロテーゼは人体にとって異物です。ですからカプセル拘縮やそれによるバストの変形の可能性はやはり残ります。異物に接する組織は少しずつ萎縮してしまいますので、大胸筋の上に挿入した場合は乳腺が萎縮するリスクが高まります。近年では大胸筋の下にプロテーゼを挿入する手法がとられることが増え、以前に比べるとこうしたトラブルは少なくなりましたが、肋骨や筋肉が変形してしまうリスクはやはりあります。こうなってしまうとプロテーゼを抜いても、元通りはならないこともあります。
3 皮膚の切開を伴う
プロテーゼを挿入するために切開する場所はバストの下側、乳輪の周囲、ワキのいずれかです。目立つ傷跡を嫌って、多くはワキを切開しますが、手術痕はやはり残ります。またこの場合、手術そのものが難しく、万一のトラブルの際の再手術も困難になります。
4 X線画像に映る
プロテーゼはかなり大きなものですし、X線画像にはっきりと映ってしまいます。会社での集団検診や病院での検査をためらう方も多く、そのために胸部の疾患の発見が遅れるなど、二次的な問題にもつながりかねません。
5 日本での製造が許可されていない
生理食塩水プロテーゼに対して、厚生労働省は国内での製造を認めていません。ですが医師個人の判断で使用することまでは禁じられていないため、海外からプロテーゼを輸入し、それを使っているというのが現状です。
プロテーゼの種類
私自身、プロテーゼ法にはさまざまな問題があると考えていますが、一方で「劇的なバストアップが可能」という特徴があります。そのため多くのクリニックで扱われており、使われるプロテーゼの種類もさまざまです。さらにプロテーゼのメーカー名や商品名がそのまま一般名称として使われていることもあり、女性たちの混乱を招いているようです。
現在、クリニックで使用されている主なプロテーゼの種類について、少しまとめてみましょう。
内容物 |
3種類 |
①生理食塩水 ②ハイドロ・ジェル ③コヒーシブ・シリコン |
表面形状 |
2種類 |
①スムースタイプ(ツルツルした手触り)
②テクスチャードタイプ(ザラザラした手触り) |
形 |
2種類 |
①ラウンドタイプ(丸形) ②アナトミカルタイプ(変形丸形) |
会社名 |
プロテーゼの種類 |
商品名 |
ユーロ・シリコン |
シリコン・テクスチャード・タイプ |
クリスタルバッグ |
PIP社 |
コヒーシブ・シリコン |
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ARION社 |
ハイドロ・ジェル |
CMC
(カルボキシン・メチル
・セルロース)バッグ |
このように、プロテーゼ法では使用するプロテーゼそのものはもちろん、手術の方法もいろいろで、クリニックによってその判断は異なります。
ですがプロテーゼ法にはまだまだ解決できていない問題が多く残されています。そのため北村クリニックでは開院以来、プロテーゼによる豊胸手術は一切行っていません。より安全性が高く、自然で美しいバストを得られる脂肪注入法のみを、一貫して行っています。
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