近年では、ファッションとしてワンポイントのいれずみを肌に入れる若い方が増えてきました。それとともに就職や結婚などのために「イレズミを消したい」というご相談も急増しています。
多くの方は「イレズミはレーザーで消せる」とお考えのようで、そのため安易にイレズミを入れてしまうようですが、レーザーによるイレズミ除去には、実はいくつもの問題点があります。
効果が不安定
レーザーはおもに黒色に反応します。黒以外の色素には反応しにくいために充分に取り切れず、効果が不安定になりがちです。
跡が残る
色素をうまく取り除けたとしても、その痕跡は白っぽい跡となって残ります。また体質等によっては、肥厚性瘢痕が残ってしまうこともあります。
痛みの問題
レーザーによるイレズミ除去では、麻酔を使わないことが多いようです。そのためレーザー光による痛みに耐えなくてはなりません。
事前に結果を予測しにくい
だいたいの見当はつきますが、イレズミがどの程度除去できるか、痕跡が残るかどうかということは、実際に施術してみなければ判らない、という結果に対する不安があります。
費用の問題
レーザー治療は決して安価ではありませんし、イレズミが大きければ施術範囲も広くなり、費用も高額になります。
これらの問題を考えあわせると、レーザーによるイレズミ除去は安全・安心の治療とはいえないと私は考えました。あとは美容外科的な手法を使うことになりますが、それにもいくつかの治療法があります。
植皮術
イレズミ部分の皮膚をそぎ取るようにして除去し、別の部位から採取した皮膚を貼り付ける方法です。植皮した皮膚がうまく生着するかどうかが確実でないということと、移植する皮膚を採取した部位が新たな痕跡として残るという問題があります。
皮弁法、エキスパンダー法
イレズミ部分の皮膚を取り除き、その周囲の皮膚を引き寄せるようにずらして、縫い合わせる方法です。イレズミが大きかったり、周辺の皮膚に余裕がないようなときは「ティッシュエキスパンダー」という風船のような器具を使い、周囲の皮膚を伸ばして余裕を作ってから行います。
削皮術
イレズミ部分の皮膚をごく薄く削り取り、軟膏などで皮膚を再生させる方法です。
切除縫合術
イレズミ部分を囲むように、木の葉型に皮膚を切除し、引き寄せて、美容外科的に細かく縫合する方法です。縫合跡が残ることと、大きなイレズミには一度の手術で対応できないというデメリットはありますが、安全性や効果の確かさから、もっとも堅実な方法だと私は考えます。
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切除縫合術による治療
まずイレズミの形や大きさにあわせて切除範囲をデザインします。次に麻酔ですが、当院では「リラックス麻酔」を併用した「4段階麻酔システム」を使いますので、麻酔注射の痛みも心配はありません。
麻酔が効いてきたら事前のデザインに沿って皮膚を切除し、丁寧に縫合して終了です。縫合には特殊な方法を用いますので、原則として抜糸は不要です。
キレイな仕上がりのために術後2ヶ月の間はテープで保護していただきますが、これはご自身で貼り替えていただければOKです。シャワーは手術当日から大丈夫です。
イレズミによる不利益は、決して小さくはありません。「プールや温泉に入れない」「交際や結婚に差し障る」「就職に悪影響を及ぼす」…。若い頃ならまだしも、ご相談にいらっしゃる方のほとんどが後悔の言葉を口にされます。ですが一度イレズミを入れてしまうと、「痕跡も残さず元通りに」などということはできません。「どうしても手術痕を残したくない」という方は、これからもイレズミと仲良くつき合っていくしかないでしょう。
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